映画の感想「仄暗い水の底から」、「来る」
映画を見ましたのでクソレビューをします。
ネタバレを含んだ文章にしていこうと思いますので、嫌な人は気をつけてください。
些末ですが、私は映画についてはズブズブの素人です。とセルフハンディキャッピングしておきます。独断と偏見と超理論によって記事が書かれますので、事実と異なることがあっても糾弾したりしないでください。
一本目「仄暗い水の底から」
2002年公開
原作:鈴木光司
監督:中田秀夫
主演:黒木瞳 他
調べて知ったんですけど、原作は7編から成る短編集の1編なんですね。
個人的にはホラーは活字が一番怖いと思っているので、そのうち読んでみようかと思います。
主演にばかり注目し、監督や演出、脚本家には目向きもしない愚かな私でも、原作者と監督が「リング」でタッグを組んだお二人だということは知っています。
キャッチコピーは「ずっとずっといっしょだよママ」、「リングのコンビが贈る魂を揺さぶるグランド・ホラー」だそうです。
2000年代初頭というのは、ジャパニーズホラーが一気に活性化した時期だと認識しています。1998年の「リング」に端を発し、「呪怨」、「着信アリ」など大ヒット作が次々と生まれた時期ですね。この作品も上記有名作品に続く作品だと思っています。
興行収入的にはリングの半分強らしく、成功、大ヒットの足切りとなる10億円には足りていないようですが、私が知っているくらいですしハリウッド化されましたし知名度はあるのではないでしょうか。
さて、肝心の内容についてですが、あらすじはググるなりwikiるなりして頂けたらと思います。wiki及びyoutubeにある予告動画のコメント欄には余裕でネタバレが書いてあるので注意してください。私は本編視聴前に被害に遭いおもしろさが1割5分ほど減少しました。
タイトルに冠されているとおり「水」が一つのキーワードとなっています。雨、湿気、雨漏り等、人間が嫌だと感じる質感が全編に渡って敷き詰められており、生理的な嫌悪感を醸し出すのに一役買っています。曇り空と雨が場面の80%を占めているのではないかと思われるくらいです。
ホラー映画としては、私が好きな「ジワジワくる」タイプかなと。呪怨や着信アリのように、悪霊や怪異の直接的な描写やビックリ演出で怖がらせるのではなく、雰囲気や見え隠れする霊的存在、恐怖を予感させる描き方が特徴的です。特に先述したような「生理的な嫌悪感」が非常によく表現されています。予告でも見ることができる、かの有名な「蛇口から髪の毛が出てくるシーン」はその真骨頂ですね。
大々的な恐怖演出はクライマックスシーンくらいでしょうか。監視カメラに映る少女の霊や、エレベーターの小窓から誰もいないはずの家のドアが開くシーンなど、細々とした恐怖のほうが秀逸で、最終局面は蛇足感があります。
蛇足とは言いつつ、実際に霊が襲ってくるシーンについては、驚くほど直接的な表現となっています。この直前の黒木瞳が娘と霊を取り違えるシーンが非常によくできており、このシーンのためにこの映画を見てもいいんじゃないかと思います。流石に言い過ぎかな。
予告の最後の霊障のシーン、予告では怖かったのですが、本編を見た時はめちゃくちゃに笑ってしまいました。
貯水タンクの内側から張手をして手形がつくとかお前はエドモンド本田か範馬勇次郎なのかと。なんでホラー作品の霊って大概馬鹿力なんですかね。幼女が金属に張手で手形をつけるとかカカロットならワクワクするやつです。
最終的な主題は家族愛と多くの方が評しているように、ラストシーンは涙腺にくるものがあります。
それにしても当時の黒木瞳がめちゃくちゃ綺麗、いや今も綺麗なんだけど。
個人的に最もポイントが高いのは若き日の水川あさみが出演していることですね。大ファンなんです。
二本目「来る」
2018年公開
原作:澤村伊智
監督:中島哲也
いつ怪異が「来る」のかという点、相手の姿が見えない恐怖については及第点。
中盤のテンポの良さとスリリングな展開は良かったです。
この「来る」での敵はスピード感があるのがおもしろいと思いました。再三にわたって引き合いに出しますが「呪怨」の伽椰子に代表されるJホラーの悪霊は、姿を晒しつつも一番怖いと感じるタイミングで狩りにくるいやらしさや、ネットリとした追い詰めを展開して主人公の関係者を襲っていきますが、この作品ではとりあえず目についたやつから手当たり次第に傷つけにきてくれる感じが後半から顕著になっていきます。呪い殺す、祟り殺すとはまた違ってて、鮮血飛び散る物理攻撃を中心としてくれるのが珍しくていいですね。ペルソナシリーズでいうところの斬撃系の攻撃を惜しげもなく披露してくれます。
無差別さもなかなかで、「その人殺す必要あった?」って思えてしまうことまであります。終盤の看護師さんに関しては気の毒というほかない。
襲われてかろうじて助かった人間が後に陥る「喉が乾いてしょうがない」症状や、怪異の正体などは最後まで説明がなく、他にも「なぜ」と問いたくなる場面が多かったのが残念でしたが、劇中「『どうして』ではなく『どうするか』の問題」といった発言があったので「どうして」は考えずに見ろというところでしょうか。作り込みが甘いって言うのは野暮ですかね。
ラストは派手な異能バトルものになるので、そういうのが好きな人は楽しめると思います。
多くの人も言われていますが、怪異を祓おうとする場面で、主人公たちがご都合主義的な優しさを発揮してしまうところはちょっとがっかりでした。たくさんの犠牲を払っておきつつ、殺すのは可愛そうとかなんだとかかんだとかを処刑直前に言うやつ大嫌いなんですよね。「いっぱい人が死んだんだぞ!」って絶叫しながら修正してやりたくなります。
見どころは柴田理恵さんです。真に迫る演技で非常にかっこよかった。
柴田理恵さんの演技についてはほとんどの人が満点つけてるのでこの映画の良心と思えます。
ホラーの皮をかぶったエンタメ作品なので、苦手な人も見てみるといいんじゃないでしょうか。
2010年代以降のホラー作品って、2000年代に興隆した、いかにもな作品と比べ、大味でエンタメ色が強く、下手すればコメディに成りかねない傾向があると思うのは私だけですかね。まぁいいんですけど。
長くなりすぎました。3500文字越えてます。学生時代の課題でもこんな長い文章を書いたことがないです。
長くなると読む気は失せるし、校正もクソ面倒くさいので、本当は一つの映画につき一つの記事にしたいのですが今回はご勘弁頂きたい。
この二つの作品に共通することとして、「周囲の人間関係の危うさ、人間の脆さ」が描かれているように感じたので、同じ記事にまとめたいなと思った次第です。
「仄暗い~」では、そもそも主人公が非常に不安定な存在です。主人公が「離婚調停中に娘を守ることに必死な母」なので不安定も無理ないかなと思いますが、それにしても情緒がおかしいです。劇中でも「精神科に通っていた」、「子供の頃夢遊病の症状が出た」という発言があるので、描かれてはいないものの、離婚に至るまでや成長過程のなかでかなり苦労をしてきたのだろうなと伺えます。
やる気のない団地の管理人、売ることしか考えていない不動産屋、理想は立派ながらも子供のトラウマになりかねない叱り方をする幼稚園の職員、冷徹そうに見える夫……
こんな人間に囲まれたら誰しもノイローゼになるでしょう。霊に取り憑かれるのも無理はない。
「来る」ではイライラするような人間しか出てきません。
妻夫木演じる男性は、中身がなく上辺だけで生きているゴミ。黒木華演じる女性は複雑な家庭環境の中で人格形成し、後に育児ノイローゼによる一種の精神崩壊を起こす危うい存在。妻夫木の友人は人から奪うことに快感を覚えるクズ。
序盤は上記数名による胸糞の悪い日常風景が続きます。
怪異は私達の暮らす現実には存在していないはずですが、上記のような癖のある人物たちは世の中に実際にいたりします。よっぽど怪異ですね。
黒木華が演じた女性は、おそらく父親はおらず、ネグレクト気味の母に育てられ、「自分は母のようにならない」と誓いつつも、蝕まれていく精神の中で不倫による現実逃避、最終的にはなりたくなかった母親のようになってしまうのは皮肉としか言いようがありませんでした。
黒木華の演じた女性だけでも、機能不全家族というかたちで現代社会の病理が描かれています。
「来る」ではホラー表現よりも人間の汚い部分や弱い部分、醜い部分を描きたかったのではないかとすら思えます。
「病は気から」とはよく言いますが、気を病んだ時に幽霊や怪異に襲われてしまうのかもしれないなとファンタジーな脳みそで考えてしまいました。
長くなりましたが以上です。
校正は面倒くさいのでやりません。
また映画見て気が向いたら何かしら書きます。